樋脇の水と風土
こんこんと清水が湧き出る田園地域
鹿児島県は、本土面積の52%をシラス台地が占めています。
2万年以上前の巨大噴火による火砕流が堆積してできた台地で、高さは数十mから100mにもなります。
シラス台地に降った雨はすぐに地中に浸透してしまうため、台地上には川や湖沼はありません。
しかしシラス台地の周辺部では、崖下から清水が湧き出ており、地域の人に美味しいと評判。
シラス層が濾過装置となって、弱アルカリ性のやわらかな水を育むのです。
湧水は、やがて幾筋もの川となり、樋脇川へと注ぎながら平野を潤していきます。
薩摩川内市樋脇町、ここが田苑酒造の焼酎造りの地です。
豊かな天然水に恵まれた樋脇町には水田も多く、古くから米作りが盛んでした。
弊社の前身である塚田醸造所をはじめて訪れた初代社長・本坊豊吉は、
蔵の周辺に広がる美しい田園風景にいたく感嘆して田苑酒造と名づけました。
樋脇を呼吸しながら田苑になっていく
焼酎の味わいを左右する大切な要素である水。
田苑酒造ではシラス台地に磨かれた樋脇の地下水を汲み上げて、
仕込み水や割り水として使っています。
そのやわらかい水質は、田苑の焼酎に共通するまろやかな味わいの秘密のひとつとなっています。
また、深緑の山々に囲まれた北薩は、平野部と言えども冬には霜が降り、
日中は暖かくても朝晩は冷えます。
そんな寒暖の差も、長期貯蔵には絶好の条件。
貯蔵庫に整然と並ぶ木樽は、膨張と収縮を繰り返し、その呼吸によって熟成を深めていきます。
長い時間をかけて、樋脇の山や川や田んぼを渡ってくる空気を、
その中に溶け込ませながら。